宇宙のことが心配です

好きに色んなことを書きます。日記が中心です。本、映画、漫画、アニメなどで暇を潰す事が多いので、その手の感想も書くかもしれません。

映画「友だちのうちはどこ?」を見た

 

友だちのうちはどこ?(字幕版)

友だちのうちはどこ?(字幕版)

  • ババク・アハマッドプール
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ネタバレ無し・あらすじのみ

 

アッバス・キアロスタミ監督作品。

 

小学生くらいの少年が、友だちのノートを間違えて、持って帰ってきてしまう話。ちょうど先生が、宿題を次に忘れてきたら退学にすると厳しく説教をした日のことだったので、少年は焦って、友だちにノートを返しに行く。その道中が描かれている。

 

先生に説教された子供が泣き出してしまう場面とか、ノートを返してあげないと友だちが退学になってしまうと少年が母に話す場面とか、子供らしい感情の表現が印象的だった。そんな子供の姿を見ていると、自分の子供のころを思い出した。確かに、自分も子供のころ、こんな風だったと思った。そう思ってしまうくらい、この映画はリアルな子供の姿を描くことに成功している。

 

大人になると、子供が悩んでいることや恐怖することが、どうでもいい小さなことに思えてしまうものだ。この映画でも、少年は友人が退学になるということでひどく悩んでいるのだが、少年の周囲の大人たちはそんなことにほとんど関心を示さない。少年は一人で悩んで、行動していく。

 

少年に感情移入しながら見ていると、大人たちが敵のようにすら見えてくる。しかし、よくよく考えれば、これは歪んだ世界観ではなく、非常に現実的な描写である。大人たちだって、別に少年に悪意を持って、そのように接するわけではないのだ。ただ、大人たちは優しさを持ちながらも、自然に、子供を軽く見てしまうのだ。

 

どうして、大人は子供を軽く見てしまうのか?その理由はいろいろあるだろう。ただ、この映画の場合でいえば、例えば大人らしい経験を持って、冷静に考えれば、先生はただ生徒たちに発破をかけるために、退学なんていう脅しを持ち出しただけなのだろうと考え付くというのがある。宿題なんて提出しなくてもまさか本当に退学なんてことにならないだろうと、経験的に思うのだ。そう思えてしまう大人からすれば、少年の焦りなど大したことじゃないと思えるはずだ。

 

さらには、ひどく苦労を重ねてきた大人からすれば、ほんとうに退学したところで、それすら大したことないと感じることもあるのではないだろうか。退学したところで、死ぬわけじゃないだろう?みたいな。実際、退学よりも悲惨なことはこの世にいくらもある。大人はそれを知っている。

 

しかし、それでもこの映画は、子供から見た世界を描く。そのとき、観客は、そうはいってもやはり子供は子供で、切実に悩んでいるということが発見できる。ああ、そういえば昔、こんなことでどうしようと悩んで、時には泣きそうなくらいに怖かったこともあったなあと、自分の子供時代と照らし合わせて、懐かしい気持ちにもなれるのだ。一見、友だちにノートを届けるという話は、映画的にあまりにしょぼいと思えるかもしれない。だが、これは子供にとっては大きなことなのだ。だから、この映画はこれでいいのだ。寧ろ、これがいいのだ。

 

結局、映画は最後にどうなるのか。この映画は別にオチで魅せる類の映画ではないが、それでも最後の場面はよかった。ラストの何気ないセリフは、そのままの意味でとることもできるが、シニカルな意味も感じさせる。それがこの映画に、ただの子供のドラマでは終わらせない深みをもたらしている。監督は小津安二郎が好きで影響を受けているとネットに書いてあったが、こういうところは、確かにその影響を感じる。ぼくは小津安二郎がけっこう好きなので、また同監督の作品をチェックしてみようと思っている。