宇宙のことが心配です

好きに色んなことを書きます。日記が中心です。本、映画、漫画、アニメなどで暇を潰す事が多いので、その手の感想も書くかもしれません。

父ありき

金欠なので、DVDをレンタルするお金までもけちり、アマゾンプライムで映画を見ている。この前、東京物語を見てから、また昔の日本映画ブームがやってきた。

父ありきは小津安二郎の映画である。父子家庭における父と子の関係が描かれている。この映画は、子供が中学生になる前あたりの話から始まり、途中から突然、子供が成長する話に変わる。まるでドラゴンボールの悟空みたいに突然大人になっているので、最初は話についていけなくなるくらいだった。小津安二郎らしい哀愁はこの映画でも健在で、印象に残る良い場面がいくつかあった。父子が二人で話をする場面はどれもよかった。釣りをしながら話したり、公園?のような見晴らしのいいところで話したり。それだけでいいものがあった。

この映画で少し気になったのは、子供が父をやけに慕っているというところだった。母のいない家庭だからなのかと想像するが、個人的には父親をここまで慕うというのは、感覚的に理解できなかった。よく心理学などで父親は子供にとって超えるべき壁であるとかなんとか、そんなような理論があり、それらの理論を大して信じているわけでもないのだが、そんな風に考える気持ちは理解できる。父親というのはやさしいだけでなく、例えば小説などでは、時に理不尽だったり暴力的だったりする。自分の現実を振り返ってみても、そんなところはあるような気がする。しかし、この映画ではそうゆうことがまるでなく、父はひたすら優しく人格的で、子供はひたすら父を慕う。大人になってからも父と一緒に暮らしたいからといって、仕事を変えようとするくらいだ。この映画はそういう意味で少し道徳的に過ぎるような気もする。美しい部分ばかり、やさしい世界ばかりを描いている気がする。でも子供が父を慕うという気持ちは確かにないわけじゃない。寧ろこの映画を見て、父と子の関係というのは本当はこうなのかもしれないと改めて思わされた。なので、別に道徳的すぎると言って、この映画を断罪する気は毛頭ない。実際、こういう父と子のドラマをみていると清々しい気持ちになれる。ただ良いなと感じられるだけでも、映画として十分ではないだろうか。

この映画では父子の関係が描かれるといったが、実際は、父に焦点が当たっていて、父単独の話が結構出てくる。元教師である父が生徒たちに同窓会を開いてもらう場面があったり。こういった場面もすごくリアルでいい。結局、そういう人生のイベントって感慨深いものだから、こうしてリアルに描かれるといいと思わざるを得ない。会話も何げなくてリアルだ。小津安二郎の映画をいくつか見ていて気付いたのは、基本的に悪い人は出てこないということ。登場人物はみんなちゃんとした人ばかりなので安心してみていられる。