映画「潮騒」を見た
ネタバレなし
三島由紀夫原作の映画。人気があるため、色々なバージョンがあるようだが、ぼくが見たのは吉永小百合が出ているやつ。
原作を読んだことがないので、映画を見て、話の内容を初めて知った。この映画は、純粋な男女の恋愛を描いている。
三島由紀夫の小説は、あまり感情移入できないので、好きじゃない。「金閣寺」「午後の曳航」「命売ります」しか読んだことがない。「金閣寺」は本格的な純文学だが、「命売ります」は娯楽系だ。三島由紀夫は、娯楽系作品もけっこう書く人らしい。たぶん、この「潮騒」もそんな系統にあると思う。
映画を見た感想は、なんだか物足りないという感じ。小説を読んだ時と同じで、あまり感情移入できなかった。この作品に人気があるというのが、理解できないくらいだ。
どうしてつまらないのか？よく分からない。それが分かれば、脚本家になれるだろう。
ただ、一つ思いつくのは、描かれるキャラクターが純朴過ぎて、感情移入できないということだ。ぼくはどちらかというと、根が腐っている人間なので、こんな美しい絵画のような恋愛を見せられても、自分とは関係ない話にしか見えない。映画を見ている間、この映画は自分が見るべき映画ではないなと何度か思った。
もう一つ思いつくのは、引き込まれるような要素がなかったということだ。普通、娯楽系映画だったら、例えば、思いがけない展開をするとか、女の方が奇抜なキャラクターをしているとか、会話に人を引き付ける深みがあるとか、そういったことがあるものだ。特に、人気のある映画は、大抵そうだ。しかし、この映画には、そういったものをほとんど感じなかった。展開もキャラクターもセリフも普通だった。ぼくは、娯楽なら娯楽らしく、もっと振り切ってほしかった。これでは、真面目な人間ドラマと娯楽の中間みたいな半端な映画になってしまっていると感じた。（たぶん、三島由紀夫は、娯楽と言っても、あくまで純文学的な娯楽を書こうとしていたから、仕方がないとは思うのだが。）
ただ、たき火の場面は、すごい良かった。この場面が印象的で、見た後、ずっと頭から離れなかった。この場面だけで、この映画を見て、よかったと思った。あんまり好きにはなれないが、三島由紀夫のすごさが感じられた。
