宇宙のことが心配です

書きたいことを書きます。現在、無職。精神療養中。

家族ゲーム

 

家族ゲーム

家族ゲーム

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 森田芳光監督を知らなかったが、調べてみると、失楽園とか間宮兄弟とか武士の家計簿とか、よく知っている映画を撮っている人だった。

よく知っていると言っても、名前だけで見たことは無いのだが。

今挙げた映画のほかにも、よしもとばななのキッチンも撮ったらしい。

これは興行的に失敗したようだが、内容はそんなに悪くないらしい。

 

調べてみると結構有名な監督のようだ。

しかし、正直なことを言うと、監督の映画にはあまり興味がない。

感覚的に、あまり趣味じゃない気がしている。

単純に最近の邦画があまり面白くないということかもしれない。

 

でも、この家族ゲームという映画は、面白かった。

アマゾンプライムで勝手に推薦されていて、どうやら高評価な作品らしいと知ってから、興味が持っていた。

 

この映画では、問題を抱えたとある家族が描かれている。

時代は一昔前。

良い大学へ行かなければだめなんだという考えが主流の時代。

次男が受験を控えているのだが、こいつの成績が上がらない。

父親は次男の成績を上げるために家庭教師を雇うことを決める。

やってきた家庭教師は、なんと三流大学の七年生だった。

という話。

 

問題を抱えた家庭に家庭教師がやってくるという時点で、何となく想像していたのは、破天荒な家庭教師がヒーローのように感動的に問題を解決していくというものだった。

もし、そうなっていたら、多分クサいドラマになっていたと思う。

ちなみに、僕はそういうクサいドラマは苦手だ。(ごくせんとか)

 

でもこの映画は、イメージとは違った。

この三流大学出身の家庭教師は、ヒーローでもなんでもなくて、本当に三流大学出身の変わり者だ。

問題を格好よく解決してくれることなどなく、この男ができる範囲内のことをやってみせるだけだ。

そこにドラマチックなところはまるでない。

この点はすごい良かった。

 

この家庭教師は、三流大学といっても、それなりに教育的に要領を得ている感じはある。

意外と言っていることはまともだし、態度も理性的だ。

決して教育的なセンスがないというわけではないという印象だった。

ただ、最初の方で、父親と家庭教師が車の中で密談するシーンがある。

父「成績を上げたら、金は出すよ。一位上げるごとに一万出してもいい」

家庭教師「ほんとですか」

家庭教師はこうして俄然やる気を出す。

家庭教師は、更にこう言う。

「一万ですよ。絶対ですよ。頼みますよ。云々」

 

このシーン、父親と家庭教師はいかにも汚い大人であり、この二人は駄目だなと感じざるを得ない。

しかし、まあ、大学生の方は、金のこととなると他のことはどうでもよくなる人間であるというだけだ。

これはリアルにクズっぽいが、ただそれだけに過ぎない。

彼はクズ人間であり、それ故に、クズであるということの不快感はあるのだが、最低限のことはちゃんとしているので、家族のメンバーたちと比べたら、不愉快な印象は無い。

つまり、三流大学という意味では馬鹿ではあるのだろうが、人間としては馬鹿ではないという感じ。

結構、常識的なのだ。

 

例えば、次男を叱り付ける時に張り手を一発くらわすシーンがあるのだが、これなんかは、ちゃんと理由があって、寧ろ次男の曲がった根性を叩きなおすためにはそれしかないのではないかと視聴者としても思ってしまうくらいなので、その意味ではちゃんとしていると思う。

勿論、どんな理由があっても、暴力はいけないという意見もあろうが、まあ、暴力に訴えるというやり方の中では比較的まともに映るのだ。

だから、家庭教師は結構まともに映る。

あくまで普通にクズっぽい大学生という感じ。

 

僕には、それよりも家族の方が酷く感じられる。

父親は、あくまで頑固に成績を上げろの一点張り。

自分が息子たちに直接かかわるとぎくしゃくするからと言って、母親と家庭教師に教育を任せている。

任せていながら、息子たちを上手に教育できない母親に苦言を呈している。

 

母親の方は、夫に怒られるのが怖いからと言って、息子たちに、勉強するようしつこく言い続けている。

 

次男は勉強をしていないのにもかかわらず、自分は頭が良いなどと言っており、時には周りを馬鹿にしているような感じすらある。

大人に対して反抗的でありながら、甘えてもいる。

言われた事を守らなくても、殴られやしないだろうとたかをくくっており、それ故に家庭教師に張り手を食らうと、すぐに言うことを聞く。

そして「やさしくしてくださいよ」などとほざく。

次男の性格は個人的にかなりむかついた。

そして、こんなやつ、確かにいるなと思わせるところが、この映画のリアルなところ。

 

長男は、次男の成績問題に関して、巻き込まれたくないという感じで、次男に比べれば優等生なのだが、色々と不満は抱えている印象。

長男は比較的、問題の少ない学生に見える。

少なくとも、見ていて、苛々はしない。

そんなに登場もしない。

家族の中では一番、良い性格をしているような気がする。

母親が「お父さんが怒るから、ちゃんと言うこと聞いてね」と言うと、長男は色々と言いたいこともあるだろうが、それらを堪えて、「わかっているよ」と答えるのだ。

そんな性格だ。

だから、それ故に、こっちとしては、辛さも人一倍あるのではと疑ってしまう。

 

僕の感覚だと、この家族の問題の根本は父親の頑固な姿勢にあるような気がする。

父親が息子らの自由意思を無視し、あくまで勉強を強制するせいで、息子らは大きなストレスを抱えている。

また、母親も父親への恐怖から、おどおどして、奴隷になり下がっている。

しかし、一方で次男の性格自体にもクズっぽいところが見られ、それが父親のせいなのかというと、それも違う気がする。

結局、何がこの家庭を脅かしているのかというのは、考えても分からない。

 

実際、父親の成績にこだわる姿勢にも確かに正義があるのだ。

良い学校には行った方が確かにいい道が開けるという事実は存在する。

こうなってくると、社会のシステムの問題も関わってきて、ますます分からなくなる。

この家族はどうしてこんなことになっているのか。

結局、言うことできるのは、社会の歪みがこの家族の中に侵入したということだろうか。

ウイルスが父親経由で家族に侵入し、家族内にストレスがばらまかれるというイメージか。

 

一番良かったシーン。

最後の食事のシーン。

家庭教師が家族を殴って失神させ、机の上の料理を全て床にぶちまけてしまう。

これがすごく爽快だった。

問題を抱えた家族を1時間以上も見せられて、視聴者としてもイライラが募っているなかで、この破壊のシーンがくる。

これは本当に良かった。

「おまえら、なにやってんの?馬鹿じゃねえの?」という人間、あるいは社会への痛烈な皮肉であるように思われる。

 

家族ゲームという映画のタイトルはおそらく、大事なものを失い不満を抱える家族を、表面だけを繕っているものとして、皮肉ったものだろう。

外部から見ると、彼らはあまりに馬鹿馬鹿しいことをしているように見える。

しかし、よく考えてみれば、どのキャラクターも馴染みのあるものだと気づく。

映画を見て笑いながらも、それが自分たちのリアルでもあると分かってしまうのだ。

こういうところが本当に良い映画である証拠であると感じた。

 

最後のヘリコプターのシーンは意味が分からなかった。

 

あと、全体的に演出の凝った作品で、実験的な趣すらある。

そして、それが結構いい味を出していたとも思う。

 

マンチェスターバイザシー

 

マンチェスター・バイ・ザ・シー (字幕版)

マンチェスター・バイ・ザ・シー (字幕版)

  • 発売日: 2017/08/18
  • メディア: Prime Video
 

 映画について情報をあさっていたとき、度々目にして、評判もよさそうだったので、いつか見ようと考えていた。

心に傷を負った人たちのドラマであり、幾分重たい話のようだと分かると、一層見てみたくなった。

 

結論から言えば、悪くはない。

しかし、そんなに面白くは無かった。

良いシーンもあったのだが、不思議とあまりインパクトがなかった。

 

少しネタバレになってしまうが、この映画で主人公は最終的に、自身の心の痛みを乗り越えることができない。

最後の方で、主人公が「どうしてもだめなんだ」と諦めがちに宣言するシーンは一番印象的だった。

珍しい映画だと思った。

多くの映画は、悲しみや葛藤はありつつも、最後にはそれを乗り越えたり、あるいはそれを癒すことが多い。

そこが感動的だったりするのだ。

でもこの映画は、悲しみを乗り越えられない。

物語の始めから終わりまで、主人公の雰囲気は感傷的で、人生に対して心を閉ざしている。

 

実際、現実世界でもどうしても乗り越えられない痛みを抱えている人もいると思う。

というより、痛みというものが、トラウマレベルででかいときに、乗り超えるなんてことがほんとに可能だろうかとも思う。

乗り越えた瞬間から完全にふっきれて何も感じなくなるとか、あるいは痛みが癒されて消滅するとか、そんなことがあるだろうかと。

そんなのは映画的な作為でしかないような気がしてならない。

実際は、痛みを抱えながら生きるというのが大抵ではないだろうか。

だから、この映画、そういう意味ではリアルと言えるかもしれない。

 

でも、そんなには印象に残らない。

この映画レベルのトラウマが自分に存在していないというのがあるかもしれない。

いや、勿論、僕自身、思い出すたびに心が痛む過去など無数にあるのだが、まあ、この映画で語られる事件と自分の嫌な過去とは比べようもないことは分かる。

 

別に乗り越えてほしかったと言うつもりはない。

これはこれでありだと思うし、良い映画ではあると思う。

ただ、不思議と印象が薄かった。

結局、そこにいきつく。

 

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

 

  前にも見たことがあるのだが、その時は退屈になって視聴を中止した。

この度、アマゾンプライムでピックアップされているのを見かけ、再び興味が湧いた。

 

結果から言えば、そんなには面白くなかった。

途中で見るのを止めてしまいたい衝動に駆られた。

でも最後まで観た。

 

主人公は昔、バードマンという役で大ヒットを飛ばした俳優で、街を歩けばサインをねだられるような有名人。

しかし、現在は落ち目である。そして、演劇に挑戦している。

自分のすべてをかけて、その劇に挑むのだが、色々と上手くいかない。

果たして、もう一度、夢をつかむことはできるのか。

みたいな話。

 

何で面白くなかったか。

僕の理解が及ばないせいかもしれない。

詳しい解説を聞けば面白さがUPするのかもしれない。

しかし、ただ見ただけで湧いてくる感想をいえば、そこまで面白くない。

 

一つには、落ち目であるがゆえの悲しみとか辛さがあまり伝わってこなかったからというのがあると思う。

家族から愛想をつかされたり、葛藤したりするシーンは確かにあるのだが、不思議と心に刺さるものはない。

この映画はどうやらブラックコメディらしいのだが、そのコミカルさによって、苦しみがマイルドなものに見えるのかもしれない。

このコメディというのが、面白くなかったもう一つの理由なのだが、それについては後に書こう。

僕がこの映画を見て、その対比として思い浮かべたのが、ロッキーという映画だ。

ロッキーに感動があったのは、やっぱり落ち目であることの孤独や苦しみをリアルに描いてみせたからだと思う。

僕はバードマンと言うこの映画を見て、知らないうちに、ロッキーくらいの苦しみが描かれていると期待をしていたようだ。

しかし、この映画では勿論苦悩は描かれているものの、あまり伝わってこなかった。

何故だろうか。

印象的なセリフやシーンが無かったからかもしれない。

そうして、なまじロッキーという超名作映画を基準にしてしまったばかりに、この映画にはあっさり期待を躱されてしまったような味気ない気分になってしまった。

 

二つ目の理由。

この映画はブラックコメディらしいのだが、それがあまり分からなかったということ。

全体的に暗い感じが漂っているし、コメディの要素は、あまり分かりやすく外出していなかったように思う。

海外の文化からすると、読み取れる面白さがあるのかもしれない。

しかし、どうにも自分には難しかった。

勿論、これは狙ってるなと分かるシーンもあるのだが、それもそこまで面白いほどではない。

爆笑など勿論しないし、せいぜい何やってんだと突っ込みを入れるくらい。

笑いはしない。

 

笑えもしないし、かといって夢に向かって努力する男のドラマとしては本格度に欠ける。

うーん。

シニカルなコメディと人間ドラマが組み合わさって、独特な雰囲気が出ているのは感じる。

でも、それもそこまで刺激的ではない。

時々入る、映画ならではの現実離れした描写にもそこまで面白さが感じられなかった。同様に、最後のシーンもあまり好きになれなかった。

 

総括。

この映画は期待してたものと違った感があった。

評価の高い作品は、基本的に面白いと感じられるタイプなのだが、珍しく面白く思えなかった。 

最近読んだ本の感想

カフカ寓話集(カフカ

カフカ寓話集 (岩波文庫)

カフカ寓話集 (岩波文庫)

  • 作者:カフカ
  • 発売日: 1998/01/16
  • メディア: 文庫
 

 一ページしかないような作品もある。

断食芸人は一番わかりやすく面白かった。

ある学会報告と巣穴、掟の問題、歌姫ヨゼフィーネなどが印象的。考えてもわからないくらいに難解だが、何か現実の一部分を感じさせるような意味深い文章が並んでおり、どうしたって考えてしまう。そんな癖になる面白さがある。
ある学会報告で、人間になったサルが、「自由よりも出口の方を求めたい」と言っている。これの意味が分からす、どうも頭に引っかかった。ある日、ふと思いついた。サルは、所詮人間が言うところの自由というのは、動物園の柵内を歩き回れるという程度のものに過ぎないと言っているのではないだろうか。そして私は、そんな自由ではなく、柵からの出口を欲するということではないか。

カフカ短編集(カフカ

カフカ短篇集 (岩波文庫)

カフカ短篇集 (岩波文庫)

 

流刑地にてが印象に残った。すごい話を書くなと。
中年男ブルームフェルトも面白い。ボールが二つ追いかけてくるのは、何なのだろうか。色々考えられそうである。 

しかし、やはり難解。それでよくわからないので忘れてしまい、印象に残る話は少なかった。個人的には、寓話集の方が分かりやすいものが多かった。

第一次世界大戦 

第一次世界大戦

第一次世界大戦

 

 第一次世界大戦について、比較的短くまとめた本。解説によれば、これだけ短くまとめられるのは天才の所業とのこと。短いのだが、その分、一文が表す内容が濃くなっており、じっくり読んでいく必要はある。細かいことは記憶に残らなかったが、大まかな流れだけは分かったので、読んでよかったと思う。

 

図説第二次世界大戦

 第一次世界大戦を読んだので、こちらも読んだ。長編は時間的にも気力的にも厳しいので、図説でざっくり把握しようと考えた。今まであまり知らずに、ヒトラーという名前だけを知っていたが、この人がしでかしたことは衝撃的だった。ヒトラーを扱ったコメディ映画なんかもあり、何気なく見た記憶があるが、今はもう笑えない気がする。ギャグにできないほどのやばさを感じてしまった。戦争はよくないなんて思っていたが、今まではたいして知りもせずに盲目的にそう思っていた。もちろん殺しあうということを想像するだけで、そのひどさはたやすく理解できるのだが、この本を読んで、殺し合い以外にもさらに非人道的でひどいことが行われるというのが分かり、改めて戦争ってまじもんの地獄だと思った。今の時代も今なりの苦しさはあると思うが、この地獄に比べれば良いということだけは、間違いない。しばらく憂鬱になった、

カポーティ短編集(カポーティ

カポーティ短篇集 (ちくま文庫)

カポーティ短篇集 (ちくま文庫)

 

 ティファニーで朝食をは、読む気が途中でなくなり挫折したのだが、この短編集はよんでいけた。楽園への小道はユーモラスで面白かった。そのあとは、旅行記のようなものが何個か続いていたが、これも楽しめた。こちらは話が面白いというよりは、異国の情景描写やそこで生活するアメリカ人としての旅情が、心地よかった。無頭の鷹は異色に感じた。ティファニーで朝食をを読んだときは、あんまりという感想だったが、どうやらこちらに読む気力が足りなかっただけのようだ。今になって読んでみれば、普通に面白い。

ナインストーリーズサリンジャー

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

 フラニーとズーイは、宗教についての論争が続いて、よくわからないという印象が最後に残ったが、こちらの短編集は面白かった。村上春樹の本を読んだときに、やたらとユーモアにこだわっているのを感じ、その良さを感じてもいたのだが、この本を読んで、なるほど、村上春樹が何を目指しているのかが見えた気がした。ユーモアっていうのはこういうことなのかと一つ腑に落ちた。地の文一つ持ってきても、キャラクター同士の掛け合いを持ってきても、どれもがセンスあるユーモアに満ちている。これは憧れても仕方ないと思った。日本では成立しないようなノリなので、より憧れるのかもしれない。これが理解できたのと同時に、村上春樹の小説で、何が気に入らないのかも見えてきた。つまり、日本が舞台なのにノリだけはサリンジャーみたいだから、気持ちが悪いのだ。日本にはこういうジョークの文化はないのに、無理やり導入するから、どうにも奇妙な小説になってしまうのだ。これからは村上春樹は止めて、サリンジャーカポーティを読もうと思った。なまじ奇妙な小説を読んで、その違和感がストレスになるくらいなら、始めから海外の小説を読んだ方がましだ。それに、サリンジャーとかの方が面白さの点でも上を行っていると思うし。

最近見た映画の感想

春になり、気持ちのいい日が増えてきた。夕方、窓を開けて、風に当たっていると心地よく、ここがハワイであるような気がしてくる。そこから、さらにハワイであるとあえて思い込むことでいい気分にも浸れる。夏と冬は色々疲れることもあるが、春はやはり心が休まる。

さて、最近見た映画の感想を書こうと思う。何個か見ているのだが、もう一個一個感想をちゃんと書くのは面倒なので、まとめて書こうと思う。それに、そこまで深い感想がある訳でもないので。

最近は、日本の昔の映画に凝っている。アマゾンで無料で見れるものばかりを見ている。

麦秋小津安二郎

麦秋

麦秋

  • メディア: Prime Video
 

原節子笠智衆など同じ俳優が何度も出てくるのが、面白く思える。

慣習に従うのではなく、自分で考えて嫁ぎ先を選ぼうとするのが、現代っぽい気がした。今では親が相手を決めるなんてことは少ないだろうが、当時、自分なりの考え方で生きようとするのは、かなりロックな姿勢ではないだろうか。周囲に相談もせず、結婚相手を決めた娘に対して、母が「のんきな子」と呟くのが印象に残った。直接怒ったりするのではなく、裏で、心底嫌だという言うように、ぼそっと不満を表明するのがリアルだった。

晩春(小津安二郎

晩春

晩春

  • メディア: Prime Video
 

 父が心配で結婚できない娘なんているのかと半信半疑になるが、そのせいか、見ていると、結婚しない理由は本当に父が心配だからなのだろうかという疑いもわいてくる。何か奥底には複雑な思いもあるのだが、それが表現できないゆえに、ひどく単純でわかりやすいことを口にしているようにも見えるのだ。何か家族間でも言えない気持ちというのが裏にあるんではないかと感じさせるような単純には割り切れな深い雰囲気を持っていると思う。それと、やっぱり嫁ぐ場面はきれいだと思う。

お茶漬けの味(小津安二郎

お茶漬けの味

お茶漬けの味

  • メディア: Prime Video
 

 最後の場面、夫が帰ってくるのが、飛行機の欠航という偶然であるというのが、いいなと思った。仲直りがその偶然によってなされるということに、何か深さを感じる。あれだけ不満を抱えていた奥さんが一転して夫と仲良くなるというのは、普通に考えたら、変じゃないかと言われかねない気がする。しかしこの映画ではそれがあまり気にならない。奥さんの気変わりが違和感なく受け入れられるのだ。たぶん、そういう風に、思い詰めていたのに、いったい何に悩んでたんだろうっていうくらいに気が変わってしまうことってあるよなと思えてしまうからなのだろう。この辺りは、すごいうまいと思った。すごく自然だし、それでいて解決の喜びも感じられる。良い。

風の中の雌鶏(小津安二郎

風の中の牝鷄

風の中の牝鷄

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 調べたところ、あまり評価が高くない作品のようだ。それを知っていたからというわけではないのだが、あまり印象には残らなかった。なぜ印象が薄いのかは、よくわからない。深刻で暗いからという気もするが、しかし、実際そこまで暗くもない気がする。寧ろとことん暗ければ逆に印象的だったかもしれない。奥さんが売春という過ちを犯してしまうことから夫婦に苦悩が始まるという話なのだが、最終的に、もう耐えて、許すしかないとなるのも、まあそれしかないよねとこちらでも納得するのだが、それが想定内な感じがして、面白みがないかもしれない。面白さや結婚について考えさせるという点では、麦秋、晩春、お茶漬けの味の方が、よかった。

一人息子(小津安二郎

一人息子

一人息子

  • メディア: Prime Video
 

 父ありきは父と子の関係を描いていた。父ありきでは父はひたすら人格的で優しく、子は父を慕っていた。この映画は、母と子を描いている。しかし、父ありきと対照的というわけではなく、母は時に厳しい。母が、大人になって都会で働いている息子を訪ねるのは、東京物語を思わせる。母は、息子の出世にどうしても期待してしまうのだが、息子は都会で働くことの厳しい現実を説明する。しかし、母はそんな息子を、それでもやはりお前は頑張りが足りないと叱責する。個人的に、この辺りは息子の方に同情してしまった。母も貧乏な人生を送ってきたのだから、その辺りの現実の厳しさは分かりそうなものなのにと。しかしそれだけ母は息子の出世を期待してきたのだろう。息子は、奥さんにだけ「本当は母さんに出てきてもらいたくなかった」と本音をこぼす。そして、息子は最後には、もう一度頑張ってみようと思う。母は、故郷へ帰って「息子は立派で、私は幸せだよ」と同僚に話す。このあたりのドラマの良さは流石といったところで、見終わってからは、良い映画を見たという充実感があった。

幕末太陽伝(川島雄三

幕末太陽傳 デジタル修復版

幕末太陽傳 デジタル修復版

  • メディア: Prime Video
 

 アマゾンプライムでやたらお勧めされてたので、予告を何気なく見たら、何やら名作らしいと知り、それからしばらく見たいという気持ちを温めていた。

コメディ映画である。落語を参考にもしているらしい。そういわれれば、そうかもと思う。たまに落語っぽいおバカな展開がある。

映画は主人公以外の話もあって、同時に進行していく。始めの方は主人公がたまに映る程度で、登場人物がわっと大勢出てくるので、何が中心になっているのか、よく分からなくなった。しかし、それでも感覚でなんとなく分かるので、問題はないが。

小さな話がいくつもテンポよく展開していくのだが、この一つ一つが観客の予想を裏切ったり、驚かせたりで、楽しませるようによく練られている。ちょうどお笑いのコントのようだ。始めは情報が多く、何だかわからないことも多いが、黙ってみていると、気づけばこのテンポとノリの虜になっている。主人公のお調子者っぷりや天才っぷりが見ていて、気持ちいい。

ラストシーンで、今までのうるさいくらいの騒々しさとみんな寝ている静けさの対照は、すごくよかった。最後に主人公が走っていくのは、なんだか面白くないこと、色々の制約やらなんやら、もっと言えば生きることの苦悩すらから、逃げ切ってみせると言っているようで、いかにもコメディという清々しさがあった。川島雄三は、主人公が映画のセットを飛び出し、現代の東京へ入り込んでしまうというラストを想定していたようなのだが、個人的にはそっちの方が面白いかもと思ってしまった。その方が、冒頭の現代の品川の部分も活きてくるし。とにかく、名作である理由は理解できた。面白かった。

レミオロメンの歌詞

レミオロメンの歌詞で好きなフレーズを10個ピックアップして、並べてみようという企画を思いつき、誰に望まれるわけでもなく、勝手にやろうと考えた。

  1. 「希望の色は空色 見上げるけど飛べないまま 僕は僕だよと呟けば ありのままでいることは これほど難しい(たやすい)」(永遠と一瞬より)
    確かに、ありのままでいるのは難しい。そして、たやすいのも事実。これはもうそうとしかいいようのないことを言っている。
  2. 「瞳とは未来そのものだから 輝かせて」(茜空より)
    茜空は透明感があって良い。未来への不安やら希望やらを美しいイメージで想像させる。マジの名曲だと思う。
  3. 「名前もない踏切 電車の風 疲れた顔は誰かに似ているよ ヘッドライトと連結の影遊び 窓に下がる腕に秋が張り付いた」タクシードライバーより)
    一時期、岡本まさみ作詞吉田拓郎作曲の曲にはまっていた頃がある。この曲を聴くと、その岡本まさみを思いだす。歌詞が情景描写になっているのだ。普通の曲というのは大抵が観念的な歌詞で構成されている。レミオロメンもそうだ。しかし、この曲は珍しく、情景がイメージしやすい。都会に疲れた運転手の映像が浮かんでくる。この都会と田舎の対比の感じとかはストーリーも感じさせる。実際、レミオロメンの曲の中で一番好きだと思う。
  4. 「何度だってやり直せる だけど今は二度とこない」(もっと遠くへより)
    もっと遠くへの歌詞はすごい。ただ、夢に向かっていけと応援しているわけはなく、人間の弱い部分もちゃんとカバーしている。RUNでもそうだが、暗い部分を無視しない辺りはやっぱりすごい。
  5. 「遠い記憶の太陽が 僕の心に入り込むことはなくて 瞳を閉じて 時は止まらず 人は変われない」 (アイランドより)
    レミオロメンの曲に段々と抵抗を感じるようになってからも、アイランドはかなり好きだった。この歌はまさに、レミオロメンが変わってしまったことに対する気持ちについて歌っているように感じる。絶望を感じさせるけど、名曲だと思う。歌詞にススキが出てくる辺りがまた良いなと思う。
  6. 「勝つか負けるかはわからない 僕らはやれるかな」(追いかけっこより)
    弱気ながらも戦う感じがいい。この曲は、儚い感じがする。エーテルは透明感がある。
  7. 「僕らはらしさを探している?思い出してる?どちらも同じさ」(紙ふぶきより)
    個人的に、なんかいいなと思った歌詞。らしさを探しているというのは、らしさを思い出しているのと同じ。確かに、そうかもしれない。さりげなく深い。
  8. 「うまくやるだけが全てじゃない 心を失ってしまったら 宇宙に意味がないんだ」(モラトリアムより)
    この曲にモラトリアムという名前が付くのが心地いい。歌詞的に、確かにモラトリアムという感じがする。色々うまくいかない感じあり、悩んでる感じあり、青い感じありで。いい曲過ぎて、歌詞全部を書いてしまいたくなる。心がすべての入り口という歌詞は、他の曲でも登場する。
  9. 「きっと何事も上手くいくかいかないか 分かっているけど したいことだけわからない」(深呼吸より)
    深呼吸は良い。それしかいえない。
  10. 「秋の重心 日々の円周 コンパスの針で切り取った 世界に色づく 落ち葉の夢」(蒼の世界より)
    このままどこか知らない世界を見つけてみないかいと言いながら、落葉樹とか独特な単語が並ぶ何だか渋い曲。それが個性的で良い雰囲気を醸している。秋の重心とか日々の円周とか落ち葉の夢とか、言葉のセンスがかっこいい。

感想的なもの

歌詞として好きなものはたくさんあるのだが、10個選ぶとなると、難しかった。本当に好きなものにすると10個を切るし、かといってハードルを下げると10個を優に超えてしまうのだ。別に10個にこだわることもないと思いつつ、こういう場合は、やっぱり10かなとも思い、困ってしまった。

あと、ほとんどエーテルの曲が並んでしまった。なかなかどうして、やっぱり一番好きなのはエーテルかな。

黒澤明の乱を見た。

昔も見ようとしたのだが

実は昔も見ようとした。けど、その時は開始30分くらいで、見る気が無くなり、止めた。黒澤明の映画って、悪く言えば堅苦しくもあるから、そういうものを見てやろうという気概がないと、実は結構眠くなったりする。生きるとか赤ひげとか特にそう。長いし。だから、個人的には黒澤明の映画はエンターテイメント系がバランスがちょうど良くて、好きなのだ。昔見た時は、どうも見るスタンスが取れてなかったようだ。今、見ると結構入ってゆけた。

ちょっと抵抗がある点

昔、見た時に抵抗を感じたことがある。それは、衣装が明るいことだ。戦国時代?ってこんなきらびやかな衣装を着てるの?そういう疑問がわき、リアリティが無いように感じた。今回改めて、乱を見ても、同じように感じた。

全体的に違和感がある

気になるのは衣装だけではない。というか、衣装は、違和感の一部に過ぎない。どうもこの映画にはリアリティの面からすると変に感じる部分がある。それは細部の問題ではない。合戦の迫力とかは、本当にリアリティがある。城が燃えるところとか、俳優の演技も相当すごい。そうではなくて、根本的なことなのだ。それは、おそらくこの映画がリア王などの原作を下敷きにして作られているということに起因していると思う。それらの原作を日本に置き換えている分だけ、どうしても違和感があるのだ。そこにやはり無理があるんじゃないだろうか。だから、結局、どんなに細部がリアルでも、戦国時代ってこんなんじゃないだろうっていう違和感はずっとある。

もう一つのどうでもいい思い込み

あともう一つ、昔この映画を見て、つまらないと思った理由がある。これは、もはや、今思えばどうでもいい思い込みなのだが、それは、なんか白黒映画の方がよくねえ?というもの。どうも僕には白黒映画には何か不思議な力があるような気がする。僕には、黒澤明しかり小津安二郎しかり、色が付いてしまうと何か物足りない感じがするのだ。何故かは分からない。普通に考えれば、色がついた方がいいような気がするのだが。

しかし、まあ、そんなわけで、僕には色が付くとあんまり良くないという固定観念があって、それで、この映画をはなからはねつけていたのだ。なので、今回この映画を見て、反省した。あんまりそこにこだわるのも変な話だと。

半分、演劇みたいなもん

七人の侍なんかは、とことんリアリティがある。勿論、創作だけど、それを感じさせることはない。だけど、この映画は前述のような違和感は少しある。それで、途中で気付いたのは、この映画半分演劇みたいなもんだなということ。いわゆるミュージカルとかそんな類いの要素を持っているということ。この映画がそういう系統にあるのだと思ったら、違和感はどうでもよくなった。リアリティは勿論追求しているけど、リアリズム映画とは少し違うのだ。

始まり方かっこよすぎ

映画は、なんか知らんが、狩りの場面から始まる。馬に乗った武士みたいのが、ひたすら、草原の中でじっと佇んで、周囲に目を凝らしている。この始まり方がかっこよすぎた。何かが始まる前触れの静けさとでもいうのだろうか。しかし、あんな草原、日本のどこにあるんだろうか。

やたら空を映すが、それが良い

この映画では、やたら空が映る。といっても、最初の狩りの場面で多いというだけだが。でも、この空の映像はかなり良かった。多分、生の色ではなく、何か映像に加工がされていると思うのだが、その色合いがまたなんとも言えない色合いで、何かこの物語に寄り添いつつ、意味ありげな雰囲気を醸している。人によって色々な解釈がてきそうな感じ。僕は夏の入道雲の感じはとても好きなので、狩りのシーンでは映像に見入ってしまった。

道化

この映画には、道化が出てくる。見ている時は、この役が何なのかすら分からなかった。後から調べて、分かった次第。大殿様を時に咎める役どころらしい。道化に関しても、前述のリアリティについての違和感の話が持ち上がってくるのだが、まあもうそれは良しとする。

道化の存在が重要なのは何となく分かるのだが、終始変な感じがした。ピーターさんのあの感じはなんだろうか。映画に合ってるのだろうか。よく分からない。なんとも言えない。道化が芸らしきものをしているシーンもあるのだが、これはもう全く笑いどころが分からなかったし。また、大殿様との掛け合いで少しコメディらしい要素を感じもしたのだが、話はあまりに真面目な雰囲気なので、それも笑いどころなのか何なのか良く分からなかった。

やっぱりすごい

まあ、色々気になるところはあったのだが、やっぱりすごいというのが最終的な感想。前述の気になるところより、すごいところの方がはるかに多かった。それらはもう書くとキリが無いので、書く気にならない。それに、すごいところはすごいとしか書けなくて、小学生みたいな感じになるので。こんな本格的な映画を日本で撮っていたというのは、ほんとにすごいことだなあと改めて思った次第。