宇宙のことが心配です

好きに色んなことを書きます。日記が中心です。本、映画、漫画、アニメなどで暇を潰す事が多いので、その手の感想も書くかもしれません。

オアシス

無職になり、誰とも喋らない生活を続けるうちに、段々と固まっていた気持ちがほぐれてはきたのだが、人としゃべることにはますます嫌気がさしてきている今日この頃。

9月になったタイミングで、バイトでもいいから何かを始めようと思い、完全にテレワークでできる仕事に応募した。仕事内容は、WEBサイトで商品のランキングを作成して、さらに紹介記事を書くというもの。応募してみると、テストとして、あるランキングを作成して、記事を書くように言われた。マニュアルとかがあって、それを読むのと、実際に作業をするので、めちゃくちゃ時間がかかった。5時間くらいかかったと思う。ただのテストなので本当の仕事よりもはるかに軽いものだ。それなのに5時間かかるとは・・・正直、軽い絶望を感じた。本当の仕事では、このテストの三倍くらいの仕事をして、もらえるのは2000円だ。ぶっちゃけ、割に合わない。というか、これでは生計が立つかどうか怪しい。完成した答案を送信して、テストの結果を待っている間で、<これだと受かっても仕事としてやっていくのはどうなんだろうか>と疑問に思った。それで、結局、テストには落ちた。今回はお見送りさせてくださいと書いてあった。今や、この仕事にあまり乗り気ではなかったが、それでも結構ショックだった。なぜ、落ちたのだろうか?紹介記事を書くと言っても3行程度のもので、それほど難しいとは思えないのだが・・・。よほど、僕の文章がひどかったのだろうか。ぶっちゃけ、落ち込む。

それで、相変わらず、どんよりとした気分で、生活している。自動的に生きているという言葉がぴったりだろう。

 

さて、近況はさておいて、タイトルにあるように「オアシス」という映画を見た。監督は、イ・チャンドン韓国映画

社会に適応できない男と脳性麻痺で体が不自由な女との純粋な恋愛を描いている。

見たあとで、一番最初に思ったのは、<すごい映画撮るなあ(びっくり)>という感想だった。

まず、女性役の人の演技がすごかった。昔、ギルバート・グレイプという映画を見たのだが、レオナルド・ディカプリオが障害のある男の子役で出演していた。それを見た時も、その演技に驚いたものだが、このオアシスの女の人はそれ以上に演技的にすごいように感じた。その演技は、もう本当に障害がある人なんじゃないかと思ってしまうくらいのもので、見ていて、いたたまれない気分になるくらい真に迫っている。正直、これにはびっくりした。ここまでのレベルのものを撮るって、韓国映画ってすごいんだなと思った。

この映画では、女の人の方は障害があって、それで社会的に孤立している。精神的にはおそらく普通の人間だ。一方、男の側は、体には問題はないが、精神的に少し非常識な癖を持ち合わせており、一般的な社会生活をしている人たちから常に疎まれ、説教を食らっているが、それでも社会に適応することができないでいる。さっき、女のひとの演技がすごいといったが、こちらの男の側の社会不適格ぶりの描写もすごい。何がすごいって、リアリティがすごいのだ。

実際、映画を見ていて、この男の振る舞いには何度もいらいらさせられた。彼の周囲の人間は彼に、<おまえ、いい加減大人になれよ>的なことを何度も注意するのだが、彼はそれをなぜか守れないのだ。<ルールなんだから守れよ>って言っても守れない。守ろうとする気がないのか、何なのか。常識的な人間からすると彼の行動は理解できないだろう。僕は、正直、こいつは頭に何か病気でも持ってるんじゃないのか?って思ってしまった。そうでも言わない限り、この男の不適格に理由がつけられないのだ。

なぜ、言われたことをやれないのか?この男は何を考えているのか?このあたりの内面は映画でははっきり明言されない。ただただ、この男は社会不適格なのだ。

しかし、ここで、この映画がやっぱりすごいなと思うのは、決してこれは非現実的なキャラクターではないというところだ。なんでなのかどんなに注意しても、守れないやつって、確かに世の中にはいる。そして、そういう人に対して社会に適応している奴がどんな反応を示すか?こういう現実もこの映画はそのまま素直に描写している。そこがこの映画を深いものにしている。ただ単純に、この男にいらいらさせられるから、この映画は嫌いだとは言いきれない。それくらいに、深みのある映画になっていると思う。

そして、さらにこの映画がすごいと思ったのは、この男は社会的な見地からすれば屑なのだが、そういう見方をしなければ、ただの感情をもった人間でもありますよということまで感じさせるように描かれていることだ。だから、見ている側としては、この男にいらいらさせられるのだが、一方でこの男だって、この男なりの真面目さで生きているんだということが感じられるのだ。このあたり、出てくるキャラクターに安易に善悪のレッテルを張らないという意志が感じられて、監督がただものじゃない気がした。

それで、最後に、この映画を見て、一番すごいなと思ったのは、あくまで男女の純粋な恋愛を中心に据えているということ。この二人は社会的に孤立しているという共通点があって、そのために差別を受けたりする場面が出てくるのだが、普通の映画だったら、こういう差別的な場面が一番強く出てしまうのではないかと思う。つまり、そういう差別を受けたりする描写があると、どうしてもメッセージのある社会的な要素の強い映画になってしまうと思うのだが、この映画では差別などはあくまで、中心のテーマのスパイス程度のものになっているということだ。社会的に孤立している二人が、その孤立ゆえに惹かれあい、その孤立ゆえに純粋な恋愛をするという、そういう恋愛映画になっていることこそ、この映画の良さだと思う。

とにかく、イ・チャンドンってすごいんだと初めて知った。