宇宙のことが心配です

好きに色んなことを書きます。日記が中心です。本、映画、漫画、アニメなどで暇を潰す事が多いので、その手の感想も書くかもしれません。

映画「神々の深き欲望」を見た

 

ネタバレ無し

 

今村昌平監督の映画は、今までに2本しか見たことがなかった。それを見た限りでは、映画の完成度が高いのは分かるが、あまり自分の好みではなかった。ぼくは、基本的には、小津安二郎みたいな人間の嫌らしいところは映さないスタンスが好きだ。映画を見て、不快な、癇に障るような気分には、できればなりたくない。今村昌平は、見ると不快な気分になるようなものを、あえて映そうとしているように思う。例えば「赤い殺意」では、女の子が蚕を手で握りつぶす描写があったような覚えがある。ぼくは、こういうのは、あまり好きじゃない。それらの描写が、映画に印象的な雰囲気を与えていることも否定しないが。

 

だから、今村昌平の映画は、もうしばらく見るのを控えようと思っていたくらいだった。でも、この映画「神々の深き欲望」はとてもよかった。上述したような今村昌平の特徴は相変わらずだったが、この映画ではそれが逆に嫌じゃなく、寧ろ、それが映画のリアリズムに貢献しているように見えた。この映画は、未開の島が舞台となっているのだが、そこに暮らす人たちは、都会の人間の目からすれば野蛮だ。この野蛮さを描くのに、今村昌平の人間の嫌なところも省かずに見せていくそのスタンスは、かなり適していたと思う。性的な場面とか村の規律に違反するものを大勢でいじめる場面とか、とても生々しく、時に馬鹿馬鹿しかった。一つ一つの場面が印象的だった。

 

未開の土地を開発しようとしたときに起きる問題というのは、かなり普遍的なテーマだ。現代でも、世界のどこかで、この映画で描かれているようなことが起きているのではないだろうか?都会の人間からすれば、未開の土地を発展させてあげるというのは、いいことだろう。しかし、その土地で昔から生きていた人間たちからすれば、余計なおせっかいということにもなりかねない。そうして、開発する側とされる側とで衝突が生じたときに、開発する側は、自分たちの行為に隠されているエゴにも気づかされるのだろう。この映画はそういう現実を描くことにも成功しているし、ただの人間ドラマとしても見ても面白くできている。今度ばかりは、切実に、今村昌平はすごいと思った。