つげ義春全集4を読んで
ぴーひゃらぴーひゃらぱっぱらぱあ
先日、3を読んだばかりだが、つげ義春全集4を読んだ。
ぴーひゃらぴーひゃらぱっぱらぱあ
<全集4について>
3はストーリー性重視の作品が並んでいたが、4になると、専らストーリー性は薄くなり、私小説風な漫画作品が並ぶ。この全集に載っている作品は、もう私の知っているつげ義春のイメージである。
短い作品が幾つも並んでいる。作者は、長編を書くのが辛かったらしい。だから、この時期には、自分の向いてることができて、その点では精神的に楽だったのではないだろうか。ただ、この全集内の作品を読む限り、精神的に明るいとは思えないので、短編をやる中で、また別の苦難にぶつかったのかもしれない。
ウィキペディアで、タイトルを調べると、作品単位で、記事が見つかる。漫画で、タイトル単位の記事が見つかるのはそうない事だ。それを読む限りでは、この全集に載っている作品は、当時は批判的だったものの、今では名作と呼ばれているようだ。
<感想>
どれも面白かったので、備忘録も兼ねて、一個ずつ、感想を述べようと思う。
・古本と少女
あっと驚くほどの人情話。簡単な話にも見えるが、こういう話は、中々描けない気がする。結構、好き。
・不思議な手紙
死ね!死ね!人の内面について、考え、さまようみたいな話し。もう、この辺で、ストーリー性は殆どない。
・手錠
話はシンプルだけど、描写や演出で、面白く読める。映画的な感じがする。
・蟻地獄
こういう話は、今じゃ珍しくないが、結構、深い味わいがある。
・女忍
3巻であったような時代劇もの。忍びの女を描く。これは、3巻の作品に似ている。ストーリー性があって、娯楽的で面白い。
・噂の武士
これも時代劇もの。宮本武蔵が出てくる。もう文学的なノリがある。
・西瓜酒
よく分からないが、この作品自体がまた夢みたいな話。
・運命
深みがありそうで、実はなさそう。でも、結構、良い。
・不思議な絵
変な話だなあ~。何だろうか、これ。でも、前の、運命という作品よりも、こちらの方が、つげ義春の生活感に基づいている感じがする。
・沼
この辺から、最近じゃ、名作と呼ばれているようだ。特に、この作品は、転換点とか何とか、言う。ラストはよく分からないが、何か、突き放されるようだ。異様なものが感じられる。
・チーコ
沼は、異様な感じで、理解を超越しているようなところもあったが、これはちゃんと分かる。異様な感じが、バランスを取って、もの悲しい感じがする。この辺が名作と呼ばれるのは納得できる。
・初茸狩り
これは、すごい。この全集の中で、一番すごいと思った。何だろうか、これ。ってかんじ。これは、つげ義春にしか描けないだろう。
・通夜
面白い。ユーモラスで、寧ろ、倫理性を感じる。
・山椒魚
よくこんなの描けるなって感じ。いや、作品自体が描けるというより、よくこれを世に発表してゆけるな、という感じ。その辺の、暗かったり、ひねくれたりする作品とかとは、次元が一つ違う。
・李さん一家
訳わからんが、もう、これは文学くさい。世間など、消滅している。
・蟹
李さん一家の続き。鳥語を話す李さんが、きもかわいい。
・峠の犬
つげ義春によると、失踪の話っぽい。ある日、犬がいなくなったと思ったら、別の所で暮らしていて、そこでは別の名前で呼ばれている。これについて考え出せば、結構な、思考材料になってしまいそうだ。
・海辺の叙景
沼とかチーコとかと同じく、ラストでばーんと見せる。大きなコマに、少ないセリフが入り、その空いている空間の大きさに、何か深遠なものを感じる。自然への感傷と静かな暮らしを望むこととは、同じことであると感じる。その二つが混じり合いながら、男と女が、何げない会話などしているのは、生々しくて、その延長には、エロさすら予感させられる。この辺の作品は、もう・・・すごい。