宇宙のことが心配です

好きに色んなことを書きます。日記が中心です。本、映画、漫画、アニメなどで暇を潰す事が多いので、その手の感想も書くかもしれません。

映画「8 1/2」の感想

<あらすじ>

F・フェリーニ監督の代表的作品。映画監督のグイドはある日、自分の体が空中を落下する夢を見る。現実生活の日常に纏わる様々な精神的・肉体的な疲れを癒す為、彼は療養と称して温泉に出掛けるが、そこでも仕事や生活から逃れることが出来ない。

<感想>

 あらすじを見た段階、つまり映画視聴前には、静かな大人な映画なのかなと思っていた。温泉に浸かって、そこでの出会いにドラマが生まれ、的な。結果的には・・・、全然違っていた。主人公は、浮気してるし、現実と幻想が入り混じって、普通の人間ドラマとは全く違う。

 まあ、こんな感想は、単に僕が、勝手に日本的な人間ドラマを想定してたからに過ぎない。温泉宿だからといって、殺人が起きるとは思わないまでも、何となく、色々あって最終的にはほっこりする、みたいな感じは、勝手に思い描いていた。

 このように書くと、つまらなかったという感想に思われてしまいそうだが、そんなことはない。というか、寧ろ、すごい映画で、驚いてしまった。今まで見た中で、一番かもしれない。見終わった時、そう思った。もちろん、映画のランキングなど、実際、何の意味もない。しかし、今までで一番すごいかもしれないと、一瞬でも思わされたことには、やはり意味がある。

 正直言うと、ストーリーは、初見ではよく分からなくなってしまうところも結構あった。この映画は、登場人物が多く、さらに、現実から幻想へと予告もなく、切り替わって、また元に戻るので、何が起こってるのか、見失ってしまったのだ。しかし、折角だからと、もう一度、見に行った時には、少なくとも話は理解できた。もう一回見ようかとも思ったが、それはやめといた。

 映画で、夢の世界とか、頭の中の世界を描くことはよくあるが、この映画ほど、それが面白く、美しく、悩ましげに、魅力的に描かれてるのを見たことがない。というか、今までに見たそうした幻想の描写とは、異質な雰囲気を感じた。

 何でかはわからない。映画によくある幻想世界が、大体CGっぽく見えたり、はっきりと現実と区別された夢と感じられるからかもしれない。それとは違って、この映画の幻想は、演劇みたいに、現実の人と物、あとカメラと音楽を駆使して、すごく魅力的なものになっている。夢なんだけど、何だか、現実の生々しさを持っているように感じられるのだ。

 実際、この映画は、現実の話が進んでると思ったら、突然、幻想の世界に切り替わる。あれ?と思ったら、切り替わっている。この切り替えも、夢と現実が互いに、あまりはっきりとは区別されてないから、なせる技だと思う。このごちゃごちゃした雰囲気が、ラストシーンや、最後の悟りゼリフ「人生は祭りだ」と、すごく合っていて、個人的には満足できる。

 この映画は、専ら、主人公一人のためだけにあるものである。だから、主人公と他者と関係のドラマではなく、寧ろ他者から遠ざかってしまった主人公が、一人で彷徨い続けるのだ。そして、当然、主人公一人に着目するなら、その内面世界が必要になるだろう。それが、この映画では、幻想として描かれることになる。

「この映画には全てがあるんだ」と主人公は、この映画の中で言う。この辺はメタでややこしいのだが、このセリフは、ほんとにこの映画っぽいセリフである。確かにこの映画には、かなり色んなことが描かれてる。宗教とか、結婚とか、映画制作とか、過去のトラウマとか・・・。この映画は、こういう、あらゆるものを詰め込みたい、何も捨てたくないという、かなりエゴイスティックなものがあり、それがまたテーマともなっている。主人公の両親が、最後に主人公にそっけない感じなのが、何か心に残る。

 個人的には、浮気相手がいきなり歌い出すところが好き。あ~ら~ら~ら。あと、みんな美男美女過ぎ。