自作詩「思いやり」
怠惰と甘えによる、
驚くべき無知の中で、私は生きてきた。
今となってはの話だ。
いつだって、今となっては、ではないか。
しかし、私は、無知によって、生かされてもきた。
無知だから、ここまで来れたのかもしれないとも思う。
怠惰と甘えだけで、私はできてるわけでもない。
弱さを出したり、消したりする奇術には、もう飽き飽きしてる。
広さのない草原を前に、私はベンチに座っている。
そこには、無邪気な子供らが、疲れた大人らが、一緒に遊んでいる。
空には、都合のいい雲が、風が、ここには、
都合のいい事ばかりがある。勿論、絶望も都合がいい。
ベンチに座りながら、私は、自分が
ヒーローになれないことを、気に病んでいる。
バカな話だ。私は、自分が
ヒーローになれると、本気で思っているのだ。
風よ、吹け、吹け、私のバカに。
あの空も、雲も、子供らも、大人らも、
みんな、私を知らないではないか。
彼らは、幸福か疲れているかのどっちかなのだ。
ここから見える景色を、見ることはできる。
でも、私は、それらを何も知らない。
ただ、じっと、見ていることしかできない。
無知のままで、甘えと怠惰のままで。
私は、誰かを思いやりたい。
彼らの中の一人を、私は、思いやりたい。
その人について、何も知らなくても、
私は、一人の人を思いやりたい。
それが、私の怠惰を、少しの間、慰め、
そして、私を都合のいい絶望に染める。
私は、ベンチに転がり、海のような空を眺める。
それから、雲の向こう側へ、目を閉じる。