自作詩「幻の足」
道を歩いていると、地面のことを忘れる。
地面を忘れると、道は道でなくなる。
地面がなくて、どうして道があるだろうか。
地面がない道など、歩けやしない。
歩けるとしたら、幻の足じゃないと。
でも、幻の足は、一人で、どんどん先へ歩いていってしまう。
地面を忘れるとは、地球を忘れることだ。
地面を忘れるとは、生きることを忘れることだ。
地面を思い出すためには、凸凹でないといけない。
歩きにくい所に来て、初めて、地面を思い出す。
道を外れても、地面はあるが、
地面を忘れたら、地面はない。
地面を思い出すために、凸凹でないといけない。
歩きにくい所へ、行かなくてははいけない。
しかし、どうして、わざわざ、歩きにくい所へ?
そう言って、幻の足が、私の先を歩いていく。
私は慌てて、それを追いかける。
幻の足と本物の足を合わせようとする。
しかし、それはできない。
幻と本物を合わせたかったら、追いかけてはいけない。
幻の足だって、本体を離れては生きられないのだから、
本体が動かなければ、戻ってくるに決まっている。
立ち止まることが大事だ。
凸凹には行けなくても、立ち止まれば、
地面のことも思い出せるではないか。
立ち止まって、幻の帰りを待つのだ。
帰ってこなければ、餓死するだけだ。
平らな道の上で、餓死するだけだ。
平らな道なら、すぐに清掃されて、
野原で死ぬより、清潔になるだろう。