映画「オリーブの林をぬけて」をみた
ネタバレ無し・あらすじのみ
アッバス・キアロスタミ監督。前作「そして人生はつづく」で出てきた青年の人生に焦点を当てた作品。青年は、ある女の子に結婚を申し込んでいるが、彼女は何も返事をしてくれない。彼は、何度も結婚しようと声をかけるのだが、うまくいかない。話はこれだけ。自然風景は映像的に力があった。セリフもいい。以前の作品とは違い、ユーモラスになっている。
この映画は、映画の撮影をしている所を映画にするという構造になっている。劇中劇ならぬ、映画内映画というわけだ。そのせいで、はっきり言って、見ていると、わけが分からなくなる時があった。余計なことを考えずに、映画を撮っているところを映画にしているだけだと思って見ようとするのだが、ついつい、映画の構造について考えてしまう。チャーリー・カウフマンの「脳内ニューヨーク」を思い出した。
小津安二郎の「お茶漬けの味」の中のセリフで、「夫婦と言うのは、このお茶漬けの味なんだ。」というセリフがある。個人的には、小津安二郎の全ての映画の中で、一番、印象に残るセリフだ。これほどシンプルで、深く、ユーモラスな言葉を他に知らない。「オリーブの林をぬけて」にもこの言葉に影響されたであろうセリフが出てくる。見た瞬間、すぐに察知できた。そして、監督がこのセリフを使ったことに、大いに納得した。やはり、海外の監督にも、この「お茶漬けの味」のセリフは印象的だったようだ。すごく、嬉しかった。
この映画は、「友達のうちはどこ?」「そして、人生はつづく」とは違って、コミカルなシーンが結構あった。映画の撮影あるあるというやつだろうか。撮影したことがない人間からすると、本当にそんなことがあるのかは分からないのだが、きっとあるのだろう。そう思って、見た。
長回しのラストシーンは、よかった。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは、視聴者が判断するわけである。個人的には、どちらのエンドなのか分からないままで、ただ美しい風景を見ていたい。