宇宙のことが心配です

好きに色んなことを書きます。日記が中心です。本、映画、漫画、アニメなどで暇を潰す事が多いので、その手の感想も書くかもしれません。

カフカの「訴訟」を読んだ

この頃、カフカが面白くなってきた。多分、実生活が暗くなって、精神が引きこもりのようになっているのが原因だと思う。カフカの本では、主人公が不条理な状況に追い込まれていくが、そういう追い込まれる際の苦しさに感情移入してしまう。カフカの本を読んで、面白いと感じる自分がやばいのではないかと心配にもなる。

 

今までに「変身」「城」を読んだことがあるが、そのときはそれ程面白いとは思わなかった。おそらく精神がまだ追い詰められていなかったせいだろう。今では「城」をもう一度読んでみようかと思う。(「変身」はそれでも気が滅入るのでもう一度読みたいとは思わない。)

 

「変身」はまだ作品の意図が感覚的に分かるような気がするのだが、「城」は難しい。「城」では、主人公は城に行こうとして阻まれるが、現実を考えたらそんな理不尽なことは起きないように思える。だからこれはそもそも通常の話ではないのだと思ってみるのだが、主人公が城に阻まれる展開にはいやに現実的な心理が存在していて、説得力があるのだ。読んでいくと阻まれるのも仕方がないように思えてくる。するとこんなことが現実でも起きているような気がしてくる。現実で起きないにしても、現実の裏の姿という気がしてくる。裏というのは真ということでもある。

 

引きこもりに近づいている自分としては阻まれるという被害者的で自虐的な感覚に共感しやすくなっているようだ。カフカの面白さがわかるにつれて、すごさが分かってきたように思う。

 

それで今回は「訴訟」を読んでみた。未完ということだったが、気にならなかった。なんでもこの「訴訟」という小説は、コンセプト通りであれば主人公が永遠に裁判を続けなくていけないことになるため、結局未完であることが自然という解釈もあるらしい。そういえば「城」も未完だが、その考えでいえばそれも当然ということになる。

 

「訴訟」は難しかった。別に法律に関する内容が多くて分からなかったわけではなく、寧ろそれについてはほとんどないくらいだが、抽象的な話が多くて難解だった。でも書いてあることは人間の普遍的な心理であって、それを理解しようとすることは面白かった。ユーモアも結構あった。一番面白かったのは商人が出てくるところだ。この商人は既に裁判を5年ほど続けている。その意味では主人公の先輩ともいえる。商人は主人公のことを新人と呼ぶ。(この時点で少し面白い)商人は弁護士に弁護してもらっているが、その上下関係はすさまじい。商人は弁護士に会おうとしても、弁護士が会ってやる気にならなくては会うことができない。3日待たされるのもざらだ。さらに面会するときには商人は、四つん這いにならなくてはならない。また、何か弁護士に気に障ることがあれば、商人は容赦なく鞭でしごかれる。この上下関係の描写は流石に喜劇だった。いくらなんでもそれは、と突っ込んでしまった。こんな喜劇的なシーンが結構あった。部分的には真面目な話も出てくるので、全体として喜劇なのか何なのかよく分からなくなる。そのよくわからなさがまた面白くもあるのがすごいところだ。